こっちに来てるって、工房で聞いたんだけど」 「……レトラ様、前々から申し上げようと──」 「おうレトラ坊! 留守にしてて悪かったな」 研究室の奥から、資料を抱えたカイジンが姿を見せた。 ベスターはドワーフにしては背が高めで痩せ型という風貌なのに対して、カイジンは少し小柄で小太りでたっぷりとした髭面で……こうして二人を見比べると、カイジンの方に軍配が上がるな。これぞドワーフ! という謎の安心感がある。 「……って何だ、お前さん一人で来たのか? 護衛はどうした?」 「えっ、ここって町の施設の一つっていう認識じゃないの? 転生したらスライムだった件 転スラ日記 第7話 感想:怒らせたらヤバイので魔王ミリムの接客はドキドキ!. 来る時も転移魔法陣使ってるし、護衛はいらなくない?」 「まあそうかもしれんが、知らねえぞ? リムルの旦那に怒られても」 「怒られたら謝る!」 「謝ればいいってもんじゃ……まあいいか、で、俺に何だって?」 「カイジンさん達にも相談してた、俺の剣なんだけど……」 「あれか。やっぱりあの構想だと、剣の耐久性に問題が出てきてな……何度か話し合ってみたんだが、一番良いのはレトラ坊の力で」 ゴホン! と大きめの咳払いが室内に響いた。 見ればベスターが少々眉間に皺を寄せ、俺からすると珍しい顔をしている。あれ、研究の邪魔だったかな? 関係ない話をするなら、外に行った方がいいか?
転生したらスライムだった件 転スラ日記 第7話 感想:怒らせたらヤバイので魔王ミリムの接客はドキドキ!
やったぞ、成功した! どうかな、俺人間に見える?) ぺた、と裸足で岩肌を歩き、ヴェルドラに近付く。 人間形態への憑依が失敗すると格好悪いので、先に一人で試してからのお披露目だ。 そういえば、やってみたら布らしきものまで『造形』出来てしまったので、今は適当にTシャツをダボッと被ったような格好にしている。どの程度の服装ならこの世界に馴染むんだろうな……まさかジャージ姿になるわけにはいかないし、うまく作れる気もしない。 (クァハハ……ハハハハ! 素晴らしい出来栄えではないか! 紛うことなき人間だ!) (そ、そうか? 手伝ってくれてありがとう) (礼には及ばぬ、実に見事だ!) ベタ褒めだった。ヴェルドラは俺に激甘なので贔屓目ありかもしれないが、俺から見てもこれは間違いなく人間そのもの。大傑作と言える完成度のはずだ。 ただちょっと、『 砂工職人 ( サンドクラフター) 』では外側しか造形出来ず、発声器官がないため未だに念話に頼るしかない。今度リムルみたいに洞窟の蝙蝠を何とかして……何とか出来るもんなのか? 転スラ世界に転生して砂になった話 - 02話 砂スキル - ハーメルン. (よくもまあ、ここまで我好みの人間を生み出せたものよ) (うん?) (お前が成長した暁には、この我が娶ってやろうぞ、クァーハハハ……!) (あ、いや俺男なんで……) これはきっと、大きくなったらパパと結婚しようねーと子供にデレデレな新米パパのアレだろう。ヴェルドラは本当に親バカが過ぎるなあ……残念な竜だ。砂に性別も何もないのでこの身体は無性だが、前世に引き続いて心は男なので、お断りします。 完成した俺の顔は、とてつもない美少女顔となっていた。 ヴェルドラ好みと言えば勇者なあの子が思い出されるが、一応は俺の顔からスタートしたためか、似ているわけではないと思う。ただし、もう俺の面影を見付けるのも難しいほどに魔改造されており、何でこんな美少女になるんだよって……どういう監督力だヴェルドラ。 せっかく作り上げたこの人間形態、たとえヴェルドラの好みが思い切り反映されているとしても廃棄は出来ない。他の顔を作る自信もないので、このまま使う気でいる。 人形を作る合間に『 砂工職人 ( サンドクラフター) 』についても色々と実験したところ、造形物を作品として記憶出来るようなので、砂に戻ってまたゼロから作っても造形速度は上がるはず。その練習もしていこう。 (おい) (何? ヴェルドラ) (いつまでも名を呼べぬのも味気無い。ここはひとつ、我がお前に名を授けてやろう!)
転スラ世界に転生して砂になった話 - 02話 砂スキル - ハーメルン
「こんな娯楽のない世界って、ホント、ウチからすれば滅んでも全然オッケーなワケ~」
ファルムス王国
48
キララ
Kirara
CV
河野 ひより
ファルムス王国 に召喚された 異世界人 の一人。ユニーク スキル 「狂言師(マドワスモノ)」は他者の意識を捻じ曲げ、自害を誘発するほどの恐ろしい能力。
落ちている石を砂に変えて取り込み、ずりずりと戻ってくる。 『砂憑依』や『 渇望者 ( カワクモノ) 』といったスキルを使って得られる砂は、全て明るい色のサラサラ砂だ。元が黒やまだら模様の岩石であっても、南国のビーチかよって綺麗な砂に変わっている。 動けないヴェルドラの前には砂山が出来ていて、集めてきた砂を『砂憑依』の『分離』で切り離すと、砂が追加された山はまた少し大きくなった。まあ俺の巣みたいなもんだな。 身軽になった俺は砂山に登り、頂上に座って胸を張るようにヴェルドラを見上げた。 (どうだヴェルドラ! 今日も結構な収穫だろ) (うむ、随分と集めたものだな。今にこの洞窟全てを砂にしてしまうのではないか?) (言い過ぎだろ……これっぽっちの砂なんか、ヴェルドラが一吹きしたら飛んでくよ) (何を言う、お前が必死に集めた砂を、我が消し飛ばしたりなどするものか!) (うん、ごめん、でもヴェルドラは俺にデレすぎだと思うんだ……) 《呟。エクストラスキル『砂操作』が使用可能です》 (それはわかってるから) 勝手に喋る俺の先生(らしきもの)は、恐らく周囲の状況把握は出来るが、声というか思念というか……何も聞こえていないんだと思う。喋り出すタイミングがおかしいのはその所為だろう。 今言われた『砂操作』は、俺の魔素で砂を自由に動かすことが出来るスキルだ。砂の魔物っぽいスキルなので俺としては満足している。まだ砂山の形を綺麗にするくらいしか使えないけど、練習を続けてみようと思う。 《呟。ユニークスキル『 渇望者 ( カワクモノ) 』が使用可能です》 ……ん? それは何、どういうこと? ここにあるのはもう全部砂なんだけど、石を砂に変える以外にも何か出来ることがあるのか? 聞こえていないだろう相手に呼び掛けてしまうが、当然返事はない。 (おい、今は我と話しているのだぞ) (あ、ごめんヴェルドラ。でも自分のスキルについて、よくわからないってのは不便だな) (スキル獲得時に、"世界の言葉"を聞かなかったのか?) 俺がまだ藤馬泉だった最期の時、崖から転げ落ちて死んだ時ってことだよな…… 朦朧としてたのか、あまりよく覚えていなかった。痛かったしもう嫌だと思ったし、何か声が聞こえたような記憶はあるんだけど…… (まあ、聞いていたならそのうち思い出すかもしれんぞ) (そうだといいな。今はとりあえず、やれるだけやってみるよ) 俺の先生的な何かは、この砂山に対して『 渇望者 ( カワクモノ) 』が使用可能、という感じで言っていたはずだ。どんな効果が出るかわからないけど……とにかく、スキルを使用………… ぼしゅん、と俺が座っていた砂山が消えた。 椅子がなくなり、俺の身体はさしゃあああ……と地面へ零れ落ちる。 《呟。ユニークスキル『 渇望者 ( カワクモノ) 』を使用、『吸収』に成功しました》 吸収って!?